ゴールドの移動平均線クロスは勝てるのか:25年分のバックテスト検証
この記事を読むとこうなります
→ ゴールドで移動平均線クロスを機械的に売買するだけで、実際に勝てていたのかが分かります
→ 移動平均線の期間設定を変えるだけで結果がどれだけ変わるかが分かります
→ 25年という長い期間で見たときに、バイ&ホールドとの差がどれくらい開くのかが分かります
「短期の移動平均線が長期の移動平均線を上抜けたら買い(ゴールデンクロス)、下抜けたら売り(デッドクロス)」というのは、通貨ペアだけでなくゴールドのトレードでもよく紹介される手法です。以前の記事ではUSD/JPY・EUR/USD・GBP/JPYの3通貨ペアで同じ手法を検証しましたが、今回はゴールド(XAU/USD)1銘柄に絞り、MT5の実際の価格データ(2001年〜2026年、約25年分)でバックテストし、本当に機能するのかを検証しました。
検証方法
ゴールド(XAU/USD)の日足終値データを使い、3種類の移動平均線クロス(短期5日/長期20日、短期20日/長期50日、短期50日/長期200日)で、常にロングかショートのどちらかのポジションを持ち続けるシンプルなモデルでシミュレーションしました。取引コスト(想定スプレッド0.30ドル)もポジション転換のたびに差し引いた上で、同じ期間の「買ってそのまま持ち続けた場合(バイ&ホールド)」と比較しています。スリッページや金利スワップは考慮していない簡易的なモデルである点にご留意ください。金相場を動かす実質金利やドル指数といった背景は今回の検証には含めていません。
検証結果:移動平均線クロスはバイ&ホールドに一度も届かず
| 設定 | 累積損益(コスト考慮後) | 取引回数 |
|---|---|---|
| MA5/20クロス | +1,609.13ドル | 411回 |
| MA20/50クロス | +1,478.65ドル | 140回 |
| MA50/200クロス | +2,061.10ドル | 35回 |
| バイ&ホールド | +4,053.33ドル | — |
(バイ&ホールドはMA50/200と同じ期間(2002年3月29日〜2026年9月9日)で比較。)

最も目立つ結果は、3種類のクロス設定のいずれもバイ&ホールドの半分にも届かなかったことです。MA50/200(いわゆるゴールデンクロス・デッドクロス)でも+2,061.10ドルにとどまり、何もせず買って持ち続けた場合の+4,053.33ドルには遠く及びません。以前の通貨ペアの検証では「パラメータ次第で好成績にも大きな損失にもなり、安定した優位性は確認できなかった」という結果でしたが、ゴールドの場合はやや性質が異なり、どの設定を選んでもバイ&ホールドという最も単純な戦略に勝てなかったという結果になりました。
背景として、この25年間のゴールドは下落を挟みながらも一貫して右肩上がりのトレンドを描いてきました。移動平均線クロスの戦略は上昇・下落どちらの局面でも機械的にロング・ショートを切り替えるため、長期の上昇トレンドの中でショートに転じてしまう場面や、方向感の乏しいレンジ相場で細かく往復ビンタを受ける場面が積み重なり、素直に買い持ちを続けた場合に見劣りする結果になったと考えられます。トレンドが一方向に強く出やすい銘柄では、頻繁に売買を繰り返すクロス戦略がかえって足かせになり得ることを示す一例と言えます。
以前の通貨ペアの検証と見比べると、この違いがはっきりします。USD/JPYではMA5/20が+55.4円とバイ&ホールド(+41.6円)を上回った一方、同じ通貨ペアのMA20/50は-2.7円、MA50/200は-24.2円とマイナスに沈みました。GBP/JPYもMA50/200が+205.3円という好成績を出す一方、MA20/50は-106.9円という大きな損失になっています。つまり通貨ペアでは、同じ1銘柄の中でもパラメータ次第でプラスとマイナスの間を行き来し、バイ&ホールド自体もそれほど強い優位性を持っていませんでした。今回のゴールドは逆に、3つの設定が軒並みプラスでありながら、それでもバイ&ホールドには一貫して届かないという結果です。通貨ペアは二国間の金利差や購買力を軸に長期的にはある程度レンジ的な値動きに戻りやすいのに対し、ゴールドは希少性やインフレヘッジ需要を背景にこの25年、方向感の強い上昇トレンドを描き続けてきました。この「相場の性質」の違いが、そのまま通貨ペアとコモディティでの検証結果の違いとして表れていると考えられます。
まとめ
- ゴールドを対象に移動平均線クロスを機械的に売買するモデルでは、3種類のパラメータいずれもバイ&ホールドに届かなかった
- 25年間、ゴールドは下落を挟みつつも一貫した上昇トレンドを描いており、機械的に売り買いを切り替えるクロス戦略には不利な相場つきだったと考えられる
- 通貨ペアの検証ではパラメータ次第でプラス・マイナスが入り乱れたのに対し、ゴールドは3設定とも一貫してプラスながらバイ&ホールドには届かず、通貨とコモディティで相場の性質そのものが異なることがうかがえる
- 移動平均線そのものが無意味というわけではなく、トレンドの方向感を掴む補助的な道具として使うのが実態に即している
- 本検証はスプレッド等を簡易的に想定した簡易モデルであり、実際の取引成績とは異なる点に留意が必要
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