【月報】2026年11月号:ゴールドとビットコインが7%前後の下落、ドル円は157円台で膠着
10月は「動いた資産」と「動かなかった資産」がくっきり分かれた月でした。ゴールドは-6.79%、ビットコインは-7.31%と大きく下げ、ユーロドルも-1.40%と下落が続いた一方、ドル円は月間で+0.10%とほぼ横ばい。米欧日の中央銀行がそろって金利を据え置くなか、10月後半に起きた米ハイテク株の急落と、月末の大手暗号資産取引所のハッキング被害が、相場の景色を大きく変えました。10月の値動きをありのままに振り返ります。
⚠️ 本レポートは執筆時点の相場情報です。相場は経済指標の結果・要人発言・地政学リスクなどによって方向性が急変することがあり、記載のトレンドや見通しは将来の値動きを保証するものではありません。取引は必ずご自身の判断と責任で行ってください。
2026年10月の振り返り
| 銘柄 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 | 騰落率 |
|---|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 157.353 | 158.944 | 156.072 | 157.505 | +0.10% |
| EUR/USD | 1.13245 | 1.13361 | 1.11040 | 1.11658 | -1.40% |
| GBP/JPY | 208.723 | 211.984 | 207.582 | 210.960 | +1.07% |
| GOLD (XAU/USD) | 4,159.37 | 4,227.85 | 3,870.15 | 3,876.91 | -6.79% |
| BTC/USD | 83,672.80 | 87,207.10 | 76,309.18 | 77,554.41 | -7.31% |
※価格はMT5(XS Fintech)のデータに基づき、日足はUTC基準で区切っています。TradingView等の他チャートとは表示タイムゾーンや参照取引所が異なるため、数値が多少異なる場合があります。
10月に大きく動いたのは、ゴールドとビットコインの2つです。ゴールドは高値4,227.85ドルから安値3,870.15ドルまで約358ドルの値幅があり、月末は安値とほとんど変わらない3,876.91ドルで引けました。ビットコインも高値87,207.10ドルから安値76,309.18ドルまで1万ドルを超える値幅を記録し、77,554.41ドルと安値圏で月を終えています。どちらも月末にかけて売りが加速し、戻りきらないまま月をまたいだ形です。
為替は対照的に落ち着いていました。ドル円の月間値幅は156.072円から158.944円までの3円弱にとどまり、始値157.353円に対して終値157.505円とほぼ行って来いです。ユーロドルは1.13台前半から1.11台半ばまでじりじりと水準を切り下げ、9月に続いて2か月連続の下落。ポンド円は208円台から210円台へと上昇し、5銘柄のなかで最もしっかりした動きでした。
まとめると、10月は「ドル円は膠着、ユーロ安が継続、ゴールドとビットコインは月末に急落」という構図です。9月が金利そのものに振り回された月だったとすれば、10月は金利がいったん落ち着いたところに、株式市場と暗号資産市場から別の揺さぶりが入った月と言えます。
月足・週足の中期トレンド構造
| 銘柄 | 現在値 | 月足 | 週足 |
|---|---|---|---|
| USD/JPY | 157.505 | 上昇トレンド継続 | 下降トレンド継続 |
| EUR/USD | 1.11658 | 下降トレンド継続 | 下降トレンド継続 |
| GBP/JPY | 210.960 | 上昇トレンド継続 | 拡大レンジ |
| GOLD (XAU/USD) | 3,876.91 | 下降トレンド継続 | 拡大レンジ |
| BTC/USD | 77,991.26 | 拡大レンジ | 上昇トレンド継続 |
※価格はMT5データに基づくため、他チャートとは多少異なる場合があります。
月足と週足の判定がそろっているのは、今月もユーロドルだけです。どちらも下降トレンド継続で、テクニカル面でも月足・週足ともに総合評価は「売り」、移動平均系はいずれも「強い売り」となっています。10月の-1.40%は、中期的な下降の流れがそのまま続いた結果と読むのが自然です。週足のRSIは33.7と売られすぎの目安とされる30に近づいており、下げのペースが速まっていることもうかがえます。
ドル円は月足が上昇トレンド継続、週足が下降トレンド継続と、時間軸によって評価が割れています。他の代表的な指標でも、月足の総合評価は「買い」なのに対して週足は「中立」で、同じような食い違いが見られます。長い時間軸の円安の流れはまだ崩れていないものの、9月に160円台から152円台まで急落したことで週足の形が崩れ、そこから立て直しきれていない状態です。10月の小動きは、この2つの力がちょうど釣り合った結果とも言えます。
ポンド円は月足が上昇トレンド継続で、10月の+1.07%もその流れに沿った動きでした。週足は拡大レンジで、テクニカル面でも月足「買い」、週足「中立」と、長期ほど強気寄りという見方が揃っています。
注意が必要なのはゴールドとビットコインです。ゴールドは月足が下降トレンド継続、週足が拡大レンジと判定されています。別の指標で見ると、月足の総合評価は「中立」、週足は「売り」です。月足の移動平均系はまだ「買い」で、年前半までの上昇で積み上がった水準の高さが数字に残っている一方、週足は移動平均系が「強い売り」まで悪化しています。長期の評価が追いつかないほど、足元の下げが速いということです。
ビットコインは、単月の騰落率と中期トレンドが一致していません。10月は-7.31%と大きく下げたにもかかわらず、週足の判定は上昇トレンド継続のままです。これは、週足で見たときの直近の安値をまだ明確に割り込んでおらず、高値・安値の切り上げという形が形式上は保たれているためです。ただ、月末の急落で月間安値圏まで押し戻されており、上昇トレンドの判定が今後も続くかどうかは、ここからの値動きしだいと受け止めるのが率直なところです。月足は拡大レンジで、上下に値幅を広げながらもみ合う局面が続いています。
ゴールドとビットコインはなぜ月末に急落したのか
10月の値動きを語るうえで外せないのが、月の後半に起きた2つの出来事です。1つは米国のハイテク株の急落、もう1つは大手暗号資産取引所バイナンスのハッキング被害でした。
ゴールドは「安全資産」なのに売られた
10月後半、米国株式市場ではハイテク株が大きく売られる場面がありました。AI(人工知能)関連の巨額投資がどこまで収益に結びつくのかという懸念が広がり、ナスダック総合指数は大きく下げています。ゴールドも月末にかけて値を下げ、MT5のデータでは月末の終値が3,876.91ドルと、月間安値3,870.15ドルのすぐ上で引けました。
株が急落する局面では「安全資産の金が買われる」と考える方も多いと思います。ところが今回は逆でした。複数の市場関係者からは、株式の損失を穴埋めしたり追加の証拠金を差し入れたりするために、換金しやすい金や銀まで売られたとの見方が出ています。金は流動性が高い資産であるがゆえに、パニック的な売りの局面では「現金をつくるための売り」の対象にもなりやすいのです。
もう1つの背景が、金利環境です。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月に利上げしたあと、10月27〜28日の会合では政策金利を3.75〜4.00%に据え置きました。ただし採決は10対2で、反対した2人はいずれも追加利上げを主張しています。据え置きとはいえ、次の一手は利下げではなく利上げかもしれない、という空気が残ったことになります。利息を生まないゴールドにとって、金利が高止まりしやすい環境は持ち続ける理由を弱める材料で、10月を通じて上値の重さにつながったと考えられます。
9月の月報では、地政学リスクが原油高とインフレ懸念を通じて金の向かい風にもなりうると書きました。10月はそこに「株安による換金売り」という別の経路が加わった形です。「有事の金買い」は、金利や資金繰りの事情しだいで簡単に打ち消されることがあります。実質金利やドルの動きと金価格の関係については金トレードの基本をまとめた記事で整理していますので、あわせてご覧ください。
ビットコインは取引所のハッキング被害が直撃
ビットコインは、月末に暗号資産取引所大手のバイナンスでハッキング被害が明らかになったことで大きく売られました。被害規模は報道によって幅がありますが、数十億ドル規模と伝えられており、バイナンスは出金を一時停止したうえで、利用者の損失を補償する方針を示しています。ビットコインは月末にかけて10月の安値76,309.18ドルに近い水準まで売られ、77,554.41ドルで月を終えました。
一方で、被害の大きさに比べると下げは限定的だったとの見方もあります。ただ、月初に83,000ドル台で始まった相場が月間で7%超下げたことに変わりはなく、同じタイミングでハイテク株が売られ、リスクを取りにくい地合いが重なったことも意識されました。
今回の件は、値動きそのものよりも「資産をどこに置いておくか」というリスクを考えさせる出来事でした。海外FXの口座へ暗号資産で入出金している方は、送金先や手順を改めて確認しておくと安心です。安全な進め方とつまずきやすいポイントは仮想通貨入出金ガイドにまとめています。
ドル円が動かなかった理由
これだけ他の市場が荒れたなかで、ドル円は3円弱の値幅に収まりました。日米の金融政策がどちらも「据え置き、ただし先々は利上げの余地あり」という同じ方向を向いたことが大きいと考えられます。日銀は10月29〜30日の会合で政策金利を1.25%程度に据え置き、あわせて公表した展望リポートでは、基調的な物価上昇率が2%の目標におおむね達したとの認識を示しました。市場ではこれをタカ派的、つまり利上げに前向きな内容と受け止める見方が出ています。
FRBも日銀も追加利上げの可能性を残しているため、金利差が大きく広がる・縮まるという材料が出にくく、方向感が生まれにくい月でした。9月のような急変動のあとに値幅が縮む展開は珍しくありませんが、こうした膠着はどちらかに材料が出たときに大きく放れるきっかけにもなります。
ユーロドルは据え置きでも下げ止まらず
欧州中央銀行(ECB)は10月29日の理事会で、預金金利を2.50%に据え置きました。声明ではエネルギー価格の上昇が続いていることに触れ、物価には上振れ、景気には下振れのリスクになると指摘しています。インフレを抑えたい一方で景気も心配、という難しい状況が改めて示された形で、12月の追加利上げを意識する声は残ったものの、ユーロを積極的に買い上げる材料にはなりませんでした。ユーロドルは月末にかけて1.11台まで下げ、9月から続く下落の流れを断ち切れていません。
経済指標と値動きの関係
10月は、経済指標そのものよりも中央銀行の会合と株式市場の動きが相場を左右した月でした。最終週には米国(27〜28日)、欧州(29日)、日本(29〜30日)と主要中銀の会合が立て続けに開かれましたが、いずれも据え置きで、事前の予想から大きく外れる内容ではありませんでした。結果として、会合直後の為替の反応は限定的で、ドル円の月間値幅が3円弱に収まったこととも整合的です。
ただし、据え置きの「中身」には違いがありました。FRBは2人が利上げを主張する割れた採決、日銀は物価目標の到達をはっきり認める内容、ECBは12月の利上げに含みを残した据え置きです。3つの中銀とも「次は利上げの可能性がある」というメッセージを残しており、市場の関心は11月以降の物価指標や雇用統計の結果に移っています。
もう1つ押さえておきたいのは、ゴールドやビットコインのように経済指標とは別の材料で大きく動く資産があるという点です。10月末の急落は、どれも事前のカレンダーには載っていない出来事がきっかけでした。指標の日程を確認することはもちろん大切ですが、ポジションを持つときは「予定外の出来事でどこまで動きうるか」を想定し、損切りの位置や取引量を決めておくことが欠かせません。
今月の注目ポイント
11月は月初から重要な材料が続きます。主な日程は次のとおりです(日時は日本時間)。
| 日時(日本時間) | 国・地域 | イベント | 予想 | 前回 |
|---|---|---|---|---|
| 11月3日(火) | 米国 | 中間選挙 | — | — |
| 11月4日(水)19:00 | ユーロ圏 | 消費者物価指数(前年比・速報) | 3.9% | 3.8% |
| 11月5日(木)21:00 | 英国 | 英中銀(BoE)政策金利発表 | 4.00% | 3.75% |
| 11月6日(金)22:30 | 米国 | 雇用統計(非農業部門雇用者数) | 6.5万人 | 2.9万人 |
| 11月6日(金)22:30 | 米国 | 失業率 | 4.2% | 4.2% |
| 11月10日(火)22:30 | 米国 | 消費者物価指数(前年比) | — | 3.7% |
| 11月19日(木)4:00 | 米国 | FOMC議事要旨(10月会合分) | — | — |
最初の山場は11月3日の米中間選挙です。選挙結果によっては財政や通商政策の見通しが変わりうるため、結果が判明していく過程でドルが大きく振れる可能性があります。週明けから値動きが荒くなる場面も想定しておきたいところです。
ポンド円にとって大きいのは、11月5日の英中銀(BoE)の政策金利発表です。市場予想は現行の3.75%から4.00%への利上げとなっています。予想どおりなら織り込み済みとして反応が限られる可能性もありますが、据え置きとなればポンドが売られるきっかけになりえます。月足で上昇トレンドが続くポンド円が、この結果をどう消化するかに注目です。
米国では、11月6日の雇用統計と10日の消費者物価指数(CPI)が続きます。前回の非農業部門雇用者数は2.9万人と低い伸びにとどまっており、予想は6.5万人です。一方、CPIは前回が前年比3.7%と物価の伸びが高い状態にあります。雇用が弱く、物価が高いという組み合わせは、FRBにとって判断が難しい状況です。12月の会合で利上げに踏み切るかどうかを占う材料として、ドル円・ユーロドル・ゴールドのいずれにも影響しやすい指標と言えます。
ゴールドとビットコインは、10月末の急落からどこで下げ止まるかが最初の焦点です。ゴールドは週足の総合評価が「売り」で、短い時間軸ほど弱さが目立ちます。ビットコインは週足の上昇トレンド判定こそ残っているものの、月間安値の76,309.18ドルを守れるかどうかが一つの目安になりそうです。いずれも、ハイテク株の動向や取引所の対応状況といった、経済指標以外の材料にも引き続き左右されやすい点には注意が必要です。
まとめ
- ゴールドは-6.79%、月末は3,876.91ドルと月間安値圏で終了。米ハイテク株の急落に伴う換金売りと、高止まりする金利が重しになったとの見方
- ビットコインは-7.31%。月末に明らかになったバイナンスのハッキング被害で76,309.18ドルまで下落。週足の上昇トレンド判定は維持しているが、安値圏での越月
- ドル円は+0.10%とほぼ横ばい。FRB・日銀とも据え置きながら利上げの余地を残し、方向感が出にくい1か月
- ユーロドルは-1.40%で2か月連続の下落。月足・週足とも下降トレンド継続で、テクニカル面の評価も「売り」で揃う
- ポンド円は+1.07%。11月5日の英中銀の政策金利発表(予想は4.00%への利上げ)が次の焦点
- 11月は米中間選挙、米雇用統計、米CPIと材料が続くため、月初から値動きが荒くなる可能性に注意
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