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逆イールドは本当に景気後退の前触れなのか:1978年からの実データ検証

逆イールドは本当に景気後退の前触れなのか アイキャッチ

この記事を読むとこうなります
→ 「逆イールドは景気後退の前触れ」という有名な通説が、過去どれだけ的中してきたかが分かります
→ 逆イールド解消から実際に景気後退が始まるまでのタイムラグの目安が分かります
→ 直近(2022〜2024年)は過去のパターンに当てはまらなかった可能性が分かります

「長短金利差が逆転する(逆イールド)と、その後に景気後退が来る」というのは、債券市場で最も有名なアノマリーの一つです。この記事では、米10年債と2年債の利回り差(FRB公式統計)と、NBER(全米経済研究所)が認定する公式の景気後退期データを使って、この通説が実際にどれだけ当てはまってきたかを検証しました。

逆イールドとは

通常、長期の債券は短期の債券より利回りが高くなります(将来の不確実性が大きい分、より高い金利が求められるため)。しかし、市場が将来の利下げや景気減速を織り込むと、長期金利が短期金利を下回る「逆イールド」が発生することがあります。10年債と2年債の利回り差がマイナスになった状態がその代表例です。

米長短金利差と景気後退期
米10年債-2年債の利回り差(黒線)。赤色の網掛けが逆イールド(マイナス)の期間、グレーの帯が実際の景気後退期(NBER認定)。

検証結果:90日以上続いた逆イールドは7回、うち6回で景気後退

1976年以降のデータで、90日以上継続した逆イールドの期間は7回ありました。それぞれの「解消日」(マイナスからプラスに戻った日)から、実際に景気後退が始まるまでの期間を調べた結果が以下の通りです。

逆イールド期間解消日6ヶ月以内に景気後退12ヶ月以内18ヶ月以内
1978/08〜1980/051980-05-02
1980/09〜1981/101981-10-26
1982/01〜1982/051982-05-20
1989/01〜1989/061989-06-30××
2000/02〜2000/122000-12-27
2006/08〜2007/032007-03-21×
2022/07〜2024/082024-08-27×××(2026年8月時点で未発生)

7回のうち6回で、逆イールド解消から18ヶ月以内に実際の景気後退が始まっており、的中率としてはかなり高いことが確認できました。ただし「6ヶ月以内」で見ると的中は7回中4回にとどまり、景気後退が始まるまでのタイムラグには数ヶ月〜1年半程度のばらつきがあります。逆イールドは「景気後退が来るかどうか」の判断材料にはなっても、「いつ来るか」を正確に当てる精度はそこまで高くないと言えます。

直近(2022〜2024年)は例外になった可能性

注目すべきは、2022年7月から2024年8月まで783日間という過去最長級の逆イールドが続いたにもかかわらず、2026年8月時点(解消から約2年後)で公式な景気後退は認定されていないことです。これは検証した7回の中で唯一、18ヶ月以内に景気後退が確認できなかったケースです。実際、逆イールド解消時点(2024年8月27日)のS&P500は5,626ポイントでしたが、その1年後には6,481ポイントまで上昇(+15.2%)しており、株式市場も景気後退を織り込む値動きにはなりませんでした(なお、S&P500の日次データは2016年以降しか確認できなかったため、他の6回について同様の株価検証はできていません)。

この「今回は違った」という結果が、単に時間差でこれから景気後退が訪れる前兆なのか、あるいはFRBの利下げ対応などによって本当に「ソフトランディング」が実現したのかは、現時点では断定できません。過去の的中率の高さから逆イールドを軽視すべきではありませんが、「逆イールド=必ず景気後退」と機械的に結びつけるのも正確ではないという、両方の教訓が今回のケースから得られます。

まとめ

  • 1976年以降、90日以上続いた逆イールドは7回。うち6回は解消から18ヶ月以内に景気後退が発生している
  • 景気後退が始まるまでのタイムラグは数ヶ月〜1年半とばらつきがあり、「いつ来るか」の精度は粗い
  • 直近の2022〜2024年の逆イールド(過去最長級)は、2026年8月時点で唯一、18ヶ月以内の景気後退が確認できていない例外的なケース
  • 逆イールドは景気後退のシグナルとして高い実績があるが、「今回も必ず同じパターンになる」と決めつけるのは正確ではない

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